1968年頃から故高橋慎二氏を中心とした防府市在住の研究者(防府考古学研究会)が継続的な表面採集活動を行い、旧石器時代遺跡が発見されていった。その後、防府考古学研究会の活動は山口県旧石器文化研究会に引き継がれ、出土資料の資料化とともに、1983年から約10年間、遺跡の調査などが行われた。
現在、44遺跡が確認されており、発掘調査によって基本的な堆積状態が確認されている。堆積層は上層より、@表土層(耕作土)、A暗褐色〜黄褐色粘質土(縄文時代遺物包含層)、B赤褐色〜黄褐色粘質土(3枚程度に細分)、C阿蘇4火砕流堆積物(確認は長桝遺跡のみ)、D段丘礫層の順である。Aの下底部〜B最上部にアカホヤ火山灰、Bの上部に姶良Tn火山灰が確認されている。現在まで、発掘調査による石器ブロック等の検出はないが、表面採集遺物の多くはBの上部が本来の包含層と想定される。
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用語 | |
約7,300年前(14C年代)に鹿児島県南部に位置する喜界カルデラの噴火によって東北南部まで飛散した火山灰。縄文時代早期と前期を区分する鍵層として利用されている。 | |
姶良Tn火山灰 | 約28,000年前(14C年代)に鹿児島県錦江湾に位置する姶良カルデラの噴火によって東北北部、さらには朝鮮半島、沿海州まで飛散した火山灰。後期旧石器時代の中頃にあたり、石器群の編年を行う際に鍵層として利用されている。 |
阿蘇4火砕流堆積物 | 約9万年前(K-Ar年代、FT年代)に熊本県北東部に位置する阿蘇山の噴火によって大規模な火砕流が発生し、その北端は山口県中部の秋吉台まで達した。宇部台地で確認される堆積物もその際のものである。 |
ナイフ形石器文化前半期の遺物 | 宇部台地の遺跡では、ナイフ形石器を主体に、角錐状石器、削器、掻器、石錐、彫器など多様な石器が採集されている。また、宇部市常盤池遺跡、南方遺跡、上野原遺跡では剥片尖頭器が出土している。利用石材は、黒曜石、安山岩、頁岩、水晶、玉髄などである。黒曜石は腰岳系を主とする西北九州産で、姫島産、隠岐産の利用がほんのわずかに確認されている。安山岩の産地は不明であるが、冠産、多久産、五色台産などが想定される。 |
細石刃文化期の遺物 | 宇部台地の遺跡では、細石刃、細石核を主体とする。削器、掻器などの一部がこの時期に含まれる可能性がある。野岳系の割合が高いが、船底状の残核を呈するものが一定量あり、東九州や瀬戸内、中国山地に系統を持つと考えられる。また、川津遺跡では北方系の削片系細石核が出土している。南方遺跡など宇部台地西部の遺跡では、福井洞窟遺跡など土器出現期の細石核と共通する形態が認められる。利用石材は、黒曜石、水晶、安山岩、ハリ質安山岩、玉髄系石材などである。宇部台地東部では黒曜石の利用の割合が非常に高いが、宇部台地東部では黒曜石以外の石材利用が大半で、対照的な様相を示す。 |