豊成叶林遺跡は、鳥取県西伯郡大山町の大山北麓の丘陵上に所在し、標高は64mを測る。1km北に日本海が広がり、晴れた日には隠岐が望める。
山陰自動車道の建設に伴い、鳥取県埋蔵文化財センターが2011年に発掘調査を行った。調査成果は『倉谷西中田遺跡Uほか』(2013)に収録。遺跡は現在消滅している。資料は鳥取県埋蔵文化財センターに収蔵されている。
AT火山灰層直下の通称白色ローム層から、直径約1mのブロックが2つ、2.5m離れて出土した。非常に小規模ながら活動内容をシンプルに理解できる点では重要な遺跡である。
ブロック1は144点の剥片と砕片で構成される。すべて花仙山の玉髄を材とし、ほぼ1母岩からなる。剥片剥離技術は拙く、完成した石器がない一方で31点の二次加工片を含むことから、学習者が日常的な石器製作を行った痕跡と考えられる。
ブロック2は炉跡の可能性がある変色した粘土塊と炭化物集中を伴い、較正年代で約30,000年前の値が測定された。石器と剥離物は計110点あり、ブロック1とは異なる1母岩の玉髄を主体とする。8点あるナイフ形石器のうち6点はこの母岩で作られ、石核も遺されていた。接合資料の分析と合わせると、熟練者が旅装の準備を行った跡と推定される。
ブロック外からは3点のナイフ形石器が出土し、うち1点は隠岐の黒曜石製である。90km北方の隠岐と50km西方の花仙山を経由地に含む遊動生活が復元できる。