高見Ⅰ遺跡は、愛媛県伊予市双海町の独立丘陵上に位置し、標高約300mを測る(写真1)。また、県内最大の河川である肱川の支流となる中山川の最上流域にあたる。
高見I遺跡の周辺は、以前より多数の旧石器遺物の分布が確認されており、高見I遺跡周辺を総称して、「東峰遺跡群」と呼称している。四国縦貫自動車道(仮称)中山スマートインターチェンジの建設に伴い、(公財)愛媛県埋蔵文化財センターが2017年に発掘調査をおこなった。
基本層序は5層に区分される(写真2)。遺物は第II層最下部から第III層中に含まれ、多くは第III層で確認された。第II層下部にはATブロックを多く含む。
多数の石器集中域が認められ、遺物は約5000点、礫群を伴う(写真3〜5)。接合資料も複数確認した。遺跡より約25km離れた箇所に産する赤色珪質岩を主要石材とし、副次的にチャートや珪質片岩、讃岐岩質安山岩などを利用している。
剥片剥離技術は交互並列剥離を基本とするが、一部縦長剥片剥離技術が認められる。特定の技術が特定のツールと強い関係性を持つことはない。
主要器種はナイフ形石器、台形(様)石器、彫器、掻器、礫石器(棒状礫)等であり、ナイフ形石器の形態はバリエーションに富み、総じて小型のものが多い(写真6)。国府型は伴わない。数点の角錐状石器と1点の剥片尖頭器が出土していることから、一部時期的な混在が想定される。
用語 | |
東峰遺跡群 | 肱川流域の最北端にして愛媛県内屈指の遺跡密集地域。 |
変成作用を受けた赤褐色を呈する堆積岩。チャートに似るが、一般的にチャートに見られる脂肪光沢、貝殻状断口を認め難い。内子町神南山およびその周辺が原産地として有力。愛媛県における主要石材の一つ。 |