翠鳥園遺跡は、大阪府羽曳野市の中心部にあたる住宅地にあり、近鉄南大阪線古市駅で下車、徒歩15分ほどの場所で、遺跡公園として見学できる。公園内には、サヌカイトを輪切りにしたような巨大なコンクリートのモニュメントがあり、よい目印となっている。また、解説板により遺跡が発掘されたようす、旧石器の作り方、旧石器時代の人々のくらしなどを知ることができる。
1992年春、市街地の中で行なわれていた緊急発掘調査によって、翠鳥園遺跡が発見された。
現在の地表面から60cm下に、段丘化以降に堆積した黄灰色シルト層があり、その下の砂礫層の直上から旧石器類およそ2万3000点が出土した。旧石器類は固い砂礫層の上に残され、あまり時間が経たないうちにシルト層に覆われたため、ごく小さな破片までが石器作りがなされた当時の状態そのままに保存されていた。
出土した石器は、遺跡から5kmほどの距離にある二上山のサヌカイトを用いて製作されたものである。石器類は高い割合で接合し、原石の状態に戻るものも含め多数の接合資料が復元された。石器の製作には、瀬戸内技法と呼ばれる近畿圏で発達した技術を用い国府型ナイフ形石器などを生産しており、そのテクニックの詳細を知ることができる画期的な発見となった。国府型ナイフ形石器を含む石器群は、後期旧石器時代後半期の初めに位置付けることができ、2万8000年ほど前の石器群と考えることができる。
用語 | |
二上山 | 奈良県と大阪府の境にある山で、良好な石器の素材となるサヌカイトを産出した。近畿地方周辺では、このサヌカイトを用いてたくさんの旧石器が作られた。 |
瀬戸内技法 | 原石から板状の素材をはぎ取り、その板状の素材を刺身を切るように刻んで、羽を広げたかのような翼状剥片を生産する技法。 |
国府型ナイフ形石器 | 翼状剥片を素材とし、石器の片側だけに急角度の加工を施して、とがったナイフの形に仕上げた石器。瀬戸内技法とともに近畿・瀬戸内地方に特徴的に存在する。 |