白滝遺跡群は、北海道の屋根と呼ばれる大雪山系の北東山麓にある遠軽町白滝に位置している。白滝市街の北北西6.5kmには黒曜石の埋蔵量が数十億トンとも言われる赤石山があり、その南側を東西に流れる湧別川の河岸段丘上を中心に100か所ほどの旧石器時代遺跡が分布している。
白滝遺跡群は日本における旧石器研究の黎明期である1950年代より注目され、多くの調査により北海道内、さらには全国的な編年研究に影響を与えてきた。1980年代までの調査は比較的小規模なものが多かったが、1995〜2008年に旭川・紋別自動車道の建設工事に伴う大規模な調査が行われ、調査面積・出土遺物とも飛躍的に増加し、約14万uから752万点、11.8トンの石器が出土した。そのほとんどは旧石器時代に属し、99%以上が黒曜石製である。これらの整理作業によって多くの接合資料が復元され、膨大な黒曜石資源を背景とした原産地での石器製作の実体が解明されてきている。
小型不定形剥片、広郷型ナイフ形石器、蘭越型・峠下型・美利河型・札滑型・幌加型・白滝型・紅葉山型・忍路子型・射的山型(広郷型)などの細石刃核、ホロカ型彫器、有舌尖頭器、小型舟底形石器などを含む北海道内のほぼ全ての石器群が出土している。複数の石器群が検出される遺跡がほとんどで、また、複数の遺跡から検出される石器群も多く、後期旧石器時代を通して人々が頻繁に白滝を訪れ、黒曜石を採取し、石器作りをしていたことが確認された。
接合資料からは各石器群の技術的特徴(どのように割ったか)・利用原石形状(河原石か露頭の石か)・搬入形態(遺跡にどのような形で持ち込んだか)・搬出形態(遺跡からどのように持ち出したか)が復元され、石材の補給方法の違いなどが明らかになってきている。年代は14C年代測定値で27,000年前から10,000年前の年代値が得られている。
用語 | |
広郷(ひろさと)型ナイフ形石器 | 北海道特有のナイフ形石器。素材の鋭い縁辺を一部に残し、他をやや平坦な二次加工が覆うもの。 |
北海道には、様々な細石刃製作技法によって残された蘭越型(らんこし)・峠下型(とうげした)・美利河型(ピリカ)・札滑型(さっこつ)・幌加型(ほろか)・白滝型・紅葉山型・忍路子型(おしょろっこ)・射的山型(広郷型)などの細石刃核が存在する。 | |
ホロカ型彫器(ちょうき) | 大型の石刃(細長い石片)を素材としてその端部を表面側に斜めに打ち欠いて鋭い刃を作り出した石器。 |