清河寺前原遺跡は、埼玉県南部のさいたま市に所在する。遺跡は大宮台地西縁に位置し、荒川に注ぐ滝沼川によって樹枝状に開析された台地上に立地する。標高は約16mである。大宮台地は、後期旧石器時代前半の遺跡は少ないが、本地域には大木戸遺跡(西大宮バイパスNo.5遺跡)、西大宮バイパスNo.4遺跡等が隣接している。
写真1 環状ブロックから出土した良質の黒耀石製石器 |
写真2 環状ブロックから出土した ガラス質黒色安山岩製等の石器と叩き石 |
※写真提供:埼玉県立さきたま史跡の博物館 写真撮影:小川忠博 |
大宮西部特定土地区画整理事業に伴い、2000〜2003年度に3次にわたる発掘調査が実施された。
清河寺前原遺跡は、第1・2地点の調査区に分かれている。旧石器時代の遺物は、下層から第Z〜\層(第2暗色帯中)、第W層下部、第V層から4つの石器文化層が検出された。第Z〜\層(第2暗色帯中)は第1地点で小規模な石器集中3箇所、第2地点で環状ブロック群が検出された。
本遺跡で注目されるのは、第2地点の環状ブロック群で、大宮台地で初めての検出例である。環状ブロックの規模は、径約15mで石器の密集部は11箇所検出された。石器総数は1,474点を数え、石器石材は良質の黒耀石が全体の88%、ガラス質黒色安山岩が9%を占めていた。石器はナイフ形石器・台形様石器が45点出土している。しかし、当該期に特徴的な局部磨製石斧等は出土していない。
清河寺前原遺跡は、大宮台地で初の環状ブロック群の発見例であるだけでなく、関東地域において、当該期に良質の黒耀石を多く用いられている事例として貴重である。
用語 | |
環状ブロック群 | 同時期に形成されたと考えられる環状にめぐる石器の分布群(ブロック群)。および関連する石器分布群。 |
局部磨製石斧 | 主に刃の部分を磨いた石斧。旧石器時代には磨製石器は存在しないといわれていたが、日本の後期旧石器時代初頭にはこの石器が特徴的に存在する。 |