日本旧石器学会
日本列島の旧石器時代遺跡

門前第2遺跡(西畝地区) Monzen 2 site(Loc. Nishiune)
後期旧石器時代 前半

1 位置

 門前第2遺跡(西畝地区)は鳥取県西伯郡大山町門前に所在し、大山北麓に手指状に広がる標高約40mの丘陵上に位置する(写真1)。なお、同町内に所在する豊成叶林遺跡は、本遺跡の約5km東に位置している。


2 調査の経緯

 2004年に農地整備事業に先立つ試掘調査を名和町教育委員会(当時)が行った際に発見された。本遺跡をはじめ、複数の遺跡が確認されたため開発事業は中断され、現地保存されている。調査成果は名和町教育委員会2005『名和町内遺跡発掘調査報告書』(名和町文化財発掘調査報告書第34集)にまとめられており、遺物は大山町教育委員会が保管している。

3 遺跡の概要

 調査範囲は10m×1mの狭小なトレンチ1箇所のみであったため、遺跡の全容は把握できていないが、AT火山灰層直下の通称「白色ローム層」上部から128点の石器が出土した。石器群はトレンチ端から1.5mの範囲で集中して出土しており、石器ブロックの一部を検出したものと推定される。
 128点の器種内訳は、ナイフ形石器(破片含む)11点のほかには定型器種は存在せず、数点の石刃と剥片・砕片類で構成されている(写真2)。使用石材はすべて黒曜石で、蛍光X線分析による産地推定では測定試料はすべて隠岐島久見産と判定されている。
 本遺跡のナイフ形石器はいずれも長さが2〜3cmと非常に小型で、石刃または縦長剥片を素材とし二側縁加工を加工して製作されている。この特徴は同時期の豊成叶林遺跡の玉髄製ナイフ形石器と共通している。また、単一の遠隔地石材を用いて小規模な石器製作を行う石材消費のあり方も豊成叶林遺跡とよく類似しており、AT降灰直前期における山陰地方中部の集団の遊動生活の一端を垣間見ることができる。

(北 浩明)(写真提供 鳥取県埋蔵文化財センター)


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