日向林B遺跡は新潟県境に接する長野県上水内郡信濃町に所在する。ナウマンゾウ化石が産出することで有名な野尻湖の南約1kmの丘陵裾に位置する。JR信越本線古間駅から遺跡までは徒歩15分程度で、現在発掘地点は上信越自動車道の下となっている。
群馬県藤岡市から長野県長野市を経由して新潟県上越市に至る上信越自動車道建設に伴い1993〜1995年に発掘調査が実施された。平成23年度国重要文化財指定。
直径25m〜30mの環状ブロック群およびその周辺から9001点の石器が出土した。これらは密な接合関係により高い同時性が証明され、当時の人々が環状のムラを構えていたことがうかがえる。特筆すべきは蛇紋岩類などで作られた磨製36点を含む60点の斧形石器である。日本最多であり大小様々なバリエーションがある。黒曜石を主体とする台形石器も斉一性が高く、国内随一の完成度を持つ。一方、貝殻状刃器と称した加工変形が少ない便宜的な石器は1000点を超え、遺跡内での活動の頻繁さを物語る。
日向林B遺跡の石器は長野県千曲市の長野県立歴史館で見学することができる。
用語 | |
環状ブロック群 | 同時期に形成されたと考えられる環状にめぐる石器の分布群(ブロック群)。および関連する石器分布群。 |
台形石器 | 加工により整形された基部と、鋭い素材縁辺による刃部がある台形の石器。 |
斧形石器 | 蛇紋岩や凝灰岩等を石材とする斧の形をした石器。刃が磨かれているものが多くある。局部磨製石斧とも呼ばれ、後期旧石器時代の前半期に特徴的に存在する。 |