平成24年11月10日(土)に、黒曜石の原産地として有名な島根県隠岐の島町で、第2回の日本旧石器学会普及講演会を実施しました。島根県古代文化センター、隠岐ジオパーク戦略会議と共催で行い、55名の方々の参加をいただきました。詳細は次の通りです。
(1)開会あいさつ | 13:30〜13:40 | 島根県教育委員会教育次長 米山 隆
日本旧石器学会広報委員 丹羽野 裕 |
(2)講演 | 13:40〜14:50 | 岡山大学名誉教授 稲田 孝司 「隠岐の黒曜石と旧石器人」 |
(3)報告 | 14:50〜15:10 | 島根大学准教授 及川 穣
「原産地遺跡から分かること−信州の黒曜石原産地の調査から−」 |
(4)ミニシンポジウム | 15:15〜16:30 | 「隠岐の黒曜石の意義と今後の調査」
コーディネーター 丹羽野 裕 パネラー 八幡 浩二(隠岐ジオパーク戦略会議議長》 稲田 孝司 及川 穣 |
(5)紙上発表 | 竹広 文明「隠岐の島町久見における黒曜石原産地遺跡の調査成果をめぐって ―後期旧石器時代の黒曜石採掘跡が存在か―」 |
まず、稲田孝司日本旧石器学会元会長が「隠岐の黒曜石と旧石器人と題して、講演。旧石器時代の遊動生活の中で、4万年前もの古い時代か」ら隠岐に人が訪れていたことや、恩原遺跡の調査成果などから東北地方の旧石器人も訪れていたことをお話しになり、聴衆の皆さんの関心を引いていました。
次に及川穣島根大学准教授が、信州での調査事例を元に、原産地遺跡の重要性とその調査からわかることを報告されました。
ミニシンポジウムでは隠岐ジオパーク戦略会議議長で黒曜石採掘権者でもある八幡浩二氏を加えて、短時間の議論を行いました。まずは隠岐の黒曜石の特徴について議論。八幡氏から他産地のものに比べて硬くて良質であることが示されました。及川氏は信州の黒曜石は隠岐に比べて透明感があるものが多いことを指摘されました。
次に後期旧石器時代にさかのぼる可能性のある久見高丸地点について論議。八幡氏から遺構が発見された経緯について説明があり、採掘場の崖が大雨で崩れた時に全く違う色・質の落ち込みが現われたことを説明されました。及川氏は採掘跡である可能性が高いが、時期については慎重に調査をして判断する必要のあることを述べられ、稲田氏も結論を急がず、崖面の保護も含めて早めの調査を行い、多くの目で確認しながらじっくり判断すること、採掘跡であれば旧石器時代でなくても大発見であることを強調されました。なお、丹羽野委員からは来年度から島根県古代文化センターで隠岐の黒曜石をテーマに研究を始めることを述べました。
最後に稲田氏が、まずは隠岐島内でしっかりと遺跡を探すことの重要性を強調。行政の調査だけでなく、島民からの情報や協力が大切であることが力説され、会場の視聴者も熱心に聞き入られました。