日本旧石器学会

アーカイブ:白石会長挨拶(2008)

2003年12月に日本旧石器学会が設立されて6年が経とうとしています。

私の前任者である稲田孝司前会長は,以下のように,日本旧石器学会に期待されている三つの役割を会長就任時の挨拶として述べています。

それらは,1.日本旧石器文化研究の進展,2.関連自然科学との連携の推進,3.国際的な研究の連携です(日本旧石器学会ニュ−スレタ−1号2004年参照)。

今日に至るまで,1.については各地域研究会との共催シンポジウムの開催および学会シンポジウムの開催,学会誌『旧石器研究』およびニュ−スレタ−の刊行,日本旧石器時代遺跡データベースの構築,2.については日本第四紀学会との共催シンポジウムの開催や関連自然科学者による講演・研究発表,3.についてはロシア・中国・韓国そして日本によるアジア旧石器協会の設立などに見られるように,本学会の役割が大いに果たされつつあるということができます。

私もこの三つの役割をさらに推進させていきたいと考えております。そのうちの主要な一つであるアジア旧石器協会は,2008年7月に開催したロシアで設立しましたが,以後2009年に中国,2010年に韓国,2011年には日本の順で国際大会を開催することになりました。大切なことは,国内での開催にあたっては,多くの研究者が等しく参画でき,その成果が享受できるような場の設営です。

国内での地域研究会との連携については、2009年度6月に九州旧石器文化研究会との共催で鹿児島県埋蔵文化財センターにて開催されました。講演会、研究発表、シンポジウム、ポスタ−セッションそして地元鹿児島をもとより隣県から出土した最新の遺物観察等をとおして、多数の研究者が参集し、盛況でした。今後共各地域研究会との連携により相乗的に発展していくことを願っています。

小学校の社会科教科書には縄文時代の内容は記事掲載が復活されたようですが,旧石器時代については掲載されていません。この点については先の「前・中期旧石器時代遺跡捏造」事件が尾を引いているかもしれません。私は,このことについて本学会が声を大にして積極的に主張していくことが重要だと考えます。そして関係する学会等とも連携を深め,早い段階に小学校社会科教科書に掲載されるよう運動していくことが肝要です。

最後になりますが,2000年に「前・中期旧石器時代遺跡捏造」事件が発覚して,2010年で10年を数えることになります。失われた日本列島人類文化の起源を再構築するためには,多大な努力が必要とされます。また,一朝一夕に成し遂げられるものではありません。本学会はその設立の趣旨をもとに,そうした活動を推進し,かつ健全な研究環境を支える役割を果たすことが今後一層に望まれることになるだろうと考えます。

日本旧石器学会会長(当時) 白石浩之(愛知学院大学教授)


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