日本旧石器学会

会長あいさつ

2014年7月18日 
佐藤 宏之 

 2014年6月21日に開催された総会で、小野昭・前会長の後を受け、新しく会長に選出されました。私は、現在東京大学大学院人文社会系研究科考古学研究室教授として、日本および東アジアの旧石器時代に関する教育・研究を担当しています。日本旧石器学会は2000年に発覚した「旧石器捏造事件」の反省をもとに、国内だけではなく、国際的に開かれた学術的な議論の場を設けることを目的として2003年12月に設立された比較的若い学会でありますが、昨年10周年を迎え、ようやく学会としても成熟期を迎えつつあると思います。1期2年の短い任期ではありますが、学会として以下のような目標の達成を重点としていきたいと考えています。

 従来にまして、日本各地の地域研究会との連携をより緊密にし、地域に根ざした旧石器時代の研究を一層発展させていきたいと思います。同時に、日本・中国・韓国・ロシアの四カ国が結成したアジア旧石器協会APAの活動をより活性化させ、四カ国以外の他のアジアの国や地域のAPA加盟を実現できるよう促して参りたいと思います。今年は秋に韓国でAPAの大会が開催されますが、2年後の2016年には日本で開催されることになっています。そのための準備を会員一同と進めて行きます。

 現在世界の旧石器研究は、考古学だけではなく、地質学・動植物学・古人類学・年代学・環境科学等との協同が必須となっていますので、関連諸科学との連携をさらに密にし、研究集会や会誌『旧石器研究』の学際化・国際化を図っていきたいと思います。特に旧石器学会では、設立以来日本の旧石器時代遺跡のデータベース化作業を学会を挙げて取り組み、16,000箇所以上の遺跡データを網羅した『日本列島の旧石器時代遺跡』を2010年に刊行しましたが、その成果は国内外で高く評価されており、研究の基礎を提供しています。今年度以降そのデータ更新および英文化とWEBでの発信を実現させたいと思います。

 次世代を担う若手研究者の育成(学会賞・研究グループ制度の充実等)を行い、民主的な議論の場を今後も学会が提供しながら、同時に真の意味でのアカデミック・ソサイエティーとしての日本旧石器学会を目指したいと思います。


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