日本旧石器学会

会長あいさつ

2010年7月21日 
小野 昭 

2010年6月26日開催の総会で会長に選出されました。2003年12月の設立総会から7年が経過し、旧石器研究だけでなく、考古学一般の研究コミュニティーに映る本会の姿もある程度形をなしてきたといえるでしょう。1期2年を単位として活動する形態からすれば小さな積み上げの連続が必要です。以下を重点的に取り組む予定であります。

日本各地の研究会との連携による研究の推進:研究の草の根をつちかうのは日本各地で活動する自主的な研究組織との連携です。本会はその最初の試みを九州旧石器研究会と共同で鹿児島大会(2009)を成功させ、その道筋を開きました。今後も可能な条件を探りながら推進します。

アジア旧石器協会 Asian Palaeolithic Association(略称APA):日本、韓国、中国、ロシア4カ国間で5年の準備期間を経て2008年にAPAを設立しました。国際的な研究環境の中で研究を進めることの重要性を相互に理解してのことであります。第4回大会を来年6月に日本で開催します。本会と国立科学博物館の共同主催でシンポジウムをおこなうことが実現し、現在準備に取り組んでいます。その中でAPAは独自のセッションを組みます。特に若い会員が、国際研究集会の経験、ならびに古人類学、遺伝学など異なる分野の研究者との交流を通して、APAを自分たちの発表と活動の場として生かしていただきたい。また今後4年毎に回ってくる日本大会を運営する力をつける場としても期待したいと思います。

隣接の諸分野との協働:第四紀地質学や古人類学だけでなく旧石器研究を進める上で関連の分野の裾野は広い。会誌『旧石器研究』にそうした分野の成果が掲載されるよう一層の努力が必要であります。研究発表、シンポジウムにおいても同様、意識的な取り組みが期待されます。

この他にも、ホームページをはじめ広報活動の充実、データベース委員会を中心に本会が全力をあげて作成したデータの活用と今後の充実の仕方の検討、また日本考古学協会と連携して教科書問題の一層の取り組みの必要などが課題であります。本年6月27日のシンポジウムにおける議論において、私は、石器の認定に関連して岩石の自然破壊、人為的な破壊の特徴について検討する何らかの作業や研究のグループを立ち上げることを発言しました。個人の自由な研究と判断の場と機会を学会が設けるのであって、組織としての学会が判定の印判を押して回るものでないことは大前提です。念のため明言しておきたいと思います。


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