日本旧石器学会

会長挨拶

2018年8月16日 
阿子島 香  

 2018年6月23日に開催された総会で、佐藤宏之・前会長の後任として、新会長に選出されました。春の役員選挙に於きましても、会員諸氏からの大きな付託を受けまして、身の引き締まる思いでおります。私は、現在東北大学大学院文学研究科考古学研究室教授として、日本列島を含む東アジアおよびグローバルな旧石器時代を中心とする考古学の教育・研究を担当しています。日本旧石器学会は、2000年に発覚した「旧石器捏造事件」の反省に基づいて、国内外を問わず社会に開かれた学術的な議論の場を確立するべく、2003年12月に設立されました。同事件の「震源地」的な宮城県を基盤とする私にとっても、本学会の責任を果たすべく微力ながら尽力する機会を得ましたことを、重く受け止めております。

 本学会として、諏訪間順副会長および委嘱委員を含む20数名の役員諸氏と共に、次のような重点課題に取り組んで参りたいと考えています。日本各地の地域研究会との連携を重要なものとして継続し、考古学の基礎である地域に根差した研究を発展させることは、これまで本学会が一貫して目標としてきたところです。それにつけても、新たな世代、いわゆる後進の育成は喫緊の課題であると判断されます。財務、学会賞、研究グループ、普及講演会などの検討を通じて取り組みます。

 会誌のさらなる充実は、学会活動の根幹であります。現在の旧石器研究は、日本列島内で完結しないという面を持つとともに、人類学・地質学をはじめとする関連諸科学との学際研究が融合へと向かう動きは、いっそう顕著となっています。日本・韓国・中国・ロシアの四カ国で構成されるアジア旧石器協会(APA)の活動をさらに発展させ、元APA事務局長の経験を活かして調整を図り、国という枠を越えた旧石器考古学を目指します。APA大会は隔年開催になりましたが、8月のロシア・アルタイ大会についで、次回は中国の予定です。 学会設立以来の重点として、旧石器時代遺跡のデータベース化事業があります。既に高い評価を得ているデータベースの改訂充実、WEB発信などについても、これまでの達成をさらに確実にし、委員諸氏と共に、世界に冠たる遺跡データベースを実現していきます。

 1期2年の短い任期ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。


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