山田遺跡は宮崎県北部の延岡市に所在する。日向灘へ向かって東流する五ヶ瀬川の支流、細見川に面した標高約50mの台地上に立地する。近隣では流紋岩などの良質石材が採取できる。
一般国道218号延岡北方道路の建設を契機とし、2002〜2004年にかけて4次にわたる発掘調査が実施された。
山田遺跡の旧石器時代は4つの時期に大別され、特にAT下位黒色帯最下部前後のT期とAT上位のV期が注目される。
T期は20点以上の礫器と2点の局部磨製石斧を含む石器組成で、ナイフ形石器や台形様石器などを伴わない。礫器類の一部は石核との峻別が難しいが、砂岩や質の粗いホルンフェルスを用いるなど、剥片石器とは明らかに石材選択が異なるものが多い。炭化物から約30,000年前(未較正)のC14年代が得られており、全国的にも重量石器heavy-duty toolがこれほど集中して発見された事例は数少ない。
V期では剥片尖頭器そのものを含む石刃技法の接合資料が確認された。これまで剥片尖頭器の使用を示す遺跡は多かったが、製作の場を如実に物語る貴重な事例といえよう。
出土品は宮崎市の宮崎県埋蔵文化財センター神宮分館で見学することができる。
用語 | |
礫器 | 礫(れき)の一部を加工して刃を作った大形の石器。1方向からのみ加工した片刃礫器(チョッパー)と相対する両方向から加工した両刃礫器(チョッピングトゥール)がある。 |
狸谷型ナイフ形石器 | 九州地方に多く出土するナイフ形石器の1種。熊本県狸谷(たぬきだに)遺跡からまとまって出土したことからこの名が付いた。 |
剥片尖頭器 | 中・大形の石刃を素材とし、その基部に抉りを入れるような加工を施して作られた尖頭器。朝鮮半島の類似した石器との関係も説かれ、九州地方に多く分布する。 |