第3回アジア旧石器協会(APA)国際シンポジウム (The 3rd Asian Palaeolithic Association International Symposium) は,2010年10月10日から16日にかけて韓国公州国立大学校で開催された。そのうち,シンポジウムのセッションは,11日から13日にかけて「アジアにおける旧石器時代文化の多様性:近年の進展と新しい動向 (Diversity of the Asian Palaeolithic Culture: Recent progress and New Trends)」をメインテーマとして開催された。日本からは計18名の研究者が参加し,11本の口頭発表と3本のポスター・セッションが行われた。会場である公州国立大学校の付近には,韓国旧石器時代研究発祥の地として著名な石壮里遺跡があり,現在は史跡に整備され博物館も設置されていることから,シンポジウム途中には,石壮里遺跡と出土石器を観察する機会にも提供された。その後,14日・15日と江原道コースと全羅道コースに分かれ,エクスカーションが実施された。シンポジウム,エクスカーションを通して,小野昭会長から2011年度の第4回APA国際シンポジウムが東京で開催されることが,繰り返しアナウンスされた。
ところで,2008年度のAPA発足時には, ロシアのA. P. デレビャンコ氏が初代APA会長として選出されたが,2年の任期を終えた事を受けて,日本,ロシア,中国,韓国による合意文書にもとづき,次のAPA会長選挙が10月11日に実施された。選挙は,各国の代表者3名(最小の参加代表者数)からなる計12名による投票で行われ,その結果,韓国の李髀侮≠ェ2010年度大会から2012年度大会までを任期とする第2代のAPA会長に選出された。
APAを構成する4カ国以外にも,インド,インドネシア,オーストラリア,フランス,ドイツから研究者が参加し,シンポジウムにおける研究発表は多彩なテーマから構成されていた。とてもそれらの内容を共通の観点からまとめる余裕はないが,最後の総合討論では,黒曜石利用などヒトとモノの動きに関する研究,モヴィウス・ラインの再定義をともなう中国・韓国を含むユーラシアにおけるハンドアックス・インダストリーの成立と分布の問題などについて活発な意見交換が行われた。研究の方法・組織・環境・動向などの点で大きく異なるアジア各国のあいだでも,共通して取り組む事ができる研究テーマが生起しつつあるということは,会場の誰もが実感できたことだと思われ,そこに第3回APAの成果が集約されるのではないかと思われる。
(総務委員会)